朝から[Dido]の照明直し。セットを変えてようやく [Le Rire] の照明つくりの時間だと思ったが、なかなかセットが変らず時間だけが過ぎていく。みんな困っていらいら、私はこういう時は冷静に仕切らなければならない。午後3時のゲネプロが迫ってくる。冷静に冷静にと言い聞かせる。
ようやくセットが変わりダンス作品に移れる。しかし全く初めてのシューティングだ。取りあえず昨日考えた照明プランを伝えてセルジオがオペレーターと打ち込みをし、舞台で待っているKARASのダンサーたち、サトー、エリ、リイチ、ナナ、ナイル(そして今はここにいる私)が即興的に動く。
彼らはいつも厳しく鍛えられているからできるようなものの、普通は到底不可能な技だろう。わずかな時間しか与えられていないステージでの新作の準備。こんなの決して在り得ない。しかしこれがその時我々に与えられた現実。
初めの照明変化の順番が良くないことを察知した私は、即座に間髪入れずに変更する。まわりのスタッフは目が点で限界を超えた不安顔。でも長年私と仕事をしているセルジオは全く冷静に変更を加える。これが仕事というものだ。頼んでもう一度だけ照明確認の15分をもらい目で確認して「よし!これでいっちょ立ってやるぜ!」と気合いを入れる私。というかそれ以外にやりようがない。が!それが仕事というもんだ!まわりの顔を見ながら、私は全く不安ではなかった。これが私のやり方だし、これで生きてきたんだから。なんていうこたあねえってんだ!
ダンス作品から始めるゲネプロには観客が満員だ。本番通りの公演前の段取りを組んで緊張が高まる。仲間たちもこの時とばかりいい感じに静けさをもって臨んでいる。よし、これでできる、と常に冷静な私。ダンス作品の衣装を着てみんな舞台に集まっている。
その時、突然舞台監督が始めるぞと言いに来た。冷静に「あと2分後だ」と伝える。彼らも準備よし、気合いが入っているぞと安心する私は、ま、なんとかなるだろうと気楽に身体をほぐす。2分も経ってないのに、では始めましょう的に来たから、いいよ、行くぜ!とOKを出すと暗転。ファイアーカーテン舞台前にある鉄製の安全壁が上がる・・・。
ピカピカと危険防止のランプが点滅しながらゆっくり鉄のカーテンが上がっていくのを後ろ向きに板付いている(暗い舞台上にすでにポジション取りをしている状態)私は、初めの照明と音を待つ。バスッ!パッ!と音と明りが点いた、さあ始まった。我々は激しく身体全身を振るわせ折り曲げ弛め走り歩き倒れ飛び硬直し溶け光の中に終わりのない動きをつづけ、ラストのライトから暗転。
激しい拍手。堂々たるダンス。堂々たるカーテ ンコール。つづくオペラはそれにも増して素晴らしいゲネプロになった。初日を終えたわけではないが、間違いなく二つのとても良い作品を作り公演することができると確信した。明日は気を引き締めて最善を尽くし最高の舞台を実現するのだ。