Works / 活動紹介

ロスト・イン・ダンス
−抒情組曲−

演出・振付・照明・美術:勅使川原三郎
アーティスティック・コラボレーター:佐東利穂子
ダンス:勅使川原三郎・佐東利穂子
 
ヴァイオリン:松岡麻衣子・甲斐史子
ヴィオラ:般若佳子
チェロ:山澤 慧
 
舞台監督:八木清市(ニケステージワークス)
照明技術:清水裕樹(ハロ)
音響技術:三森啓弘(ミックスゾーン)
衣装製作:武田園子(ヴェロニク)
 
主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
   東京都/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
企画制作:東京芸術劇場 KARAS
制作協力:BLUESHEET
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
 
上演時間:60分
初演:2018年12月 東京芸術劇場 プレイハウス
 
 
photo by Akihito Abe
 
ダンスに憑かれた佐東利穂子へのオマージュ
あなたは自分自身を失った 嘆く間も無く
ある種の無邪気な無意味さと
深くも軽やかでもある終わりなき感情と
質感の動きによって生まれつづけるダンス
あなたは今、もうすでにここに存在していないのだよ
あなたはまだ気がつかない でも
存在していないにも関わらずあなたは踊りつづける
あなたには誰も触れることができない あなた自身さえも
美のきわどさ、はかなさ、奇妙で恐ろしいはかない美である死は夢のよう
いくら死を夢見ても永遠に生き延びてしまいそうな恐怖を
あなたは予感してしまう
向こう岸にある世界へ
それは喜びの? 悲しみの?
 
勅使川原三郎
 
ギャラリー
レビュー(抜粋)
メルキュール・デザール 2019年1月 藤原聡 氏
佐東のダンスの最中、そのうち勅使川原がステージ脇からいつの間にかステージに出現し、2人は互いにコートを回転させながら身にくるむように交代して身に付けあるいは脱ぐ。単純ながら魔法のようなそれはどことなくエロティックでもある。
これらは何らかのストーリー性や意味性に還元できる類のものではなく、まさに勅使川原の言う「ロスト・イン・ダンス」=「ダンスギリギリのダンス」であり、そこにいわゆる個性というものはないのだ。あるのは純粋な身体の躍動と名状し難い情念のみ、観客はただそれを息を飲みながらひたすら眺めていればよい。勅使川原の演出は恐らく佐東の欲動におおまかな「運動のかたち」を与えただけ。筆者はベルク作品から言うならば第3楽章のアレグロ・ミステリオーソで佐東が見せた箍(たが)の外れたような痙攣的に細かいニューロティックなダンスそれ自体の迫力で「鳥肌が立った」(巷間よく使われる「感動」と言う意味ではなく、文字通りの不気味さから来るあのぞわぞわする感覚と取って欲しい)。このダンスの最後には冒頭の円が再度現れるが、そこで2人は合一し、そして別れ取り残される(佐東)。これは「ダンスに憑かれた」(勅使川原)佐東が取り残された彼岸の表現なのだろう。
[媒体:音楽批評・評論のウェブ・マガジン Mercure des Arts メルキュール・デザール http://mercuredesarts.com/ ]