Works / 活動紹介

オルガン
-呼吸する物理学-

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構成・演出・照明 勅使川原三郎
出演 勅使川原三郎、佐東利穂子、川村美恵、ジイフ、鰐川枝里、山本奈々
上演時間 60分
初演 2012年4月12日 東京・両国シアターX(カイ)
主催 KARAS
提携 シアターX(カイ)
世界が物語で溢れていた時代からどれだけの時と距離を隔てているのだろう
身体に満ちていた言葉の消失に気づかない
嘆いても、自覚しない記憶をどうして取り戻すことができるだろう
手腕、足脚が二対ずつしかなく、心臓がたった一つしかない!
にもかかわらず自分は未知数だ
それを知った時から身体の物語を作りはじめる
言葉が身体を使うと発せられる
身体を使って発した言葉と身体が擦れ合い世界とぶつかる
歴史や伝統が土台になっている現在とひとは言う
ふらふらと身体が歴史の上を徘徊する
この不安定こそ確かな身体だ
そして時として力を込める
考える、極限に向かう
呼吸するオルガン 空気の循環が音になり生になる
呼吸する身体組織 空気化する液体人間
流動する気体 流動する液体 液体の中のオルガン
音楽が血液の中に響く
空気化した身体=音楽=ダンス
ー勅使川原三郎
この作品に寄せて

人は様々多種多様な形や表現で人生(その人の人生)を表している。
ミニチュアール(小さな模造)としての世界や宇宙、つまり自然を見直し、
自らの身体を投影し、そこに居る場所を想像し、実際に作ってきた。
音楽も世界や宇宙つまり自然のミニチュアールではなかったのか。
音楽そのものは小さな「別の生き物」として生まれたのではないか。
私たちはミニチュアールであり、
「縮小と拡大」を生きようとしているのではないか。
現実を想像力によって「もっと」よく見えるようにしようと、
小さな人間が「自然」を小さくして、生命をつかもうとしている。
しかし一つ一つの呼吸は常に実寸大でしかない。
それは時として息苦しいのだが。
想像力は呼吸とともにある。
ー勅使川原三郎
ギャラリー
レビュー(抜粋)
ダンスマガジン 2012年7月号   石井達朗氏
本作全体を最初から最後まで支配しているのは照明である。舞台と観客をひとつに連係させ、光の移動や明暗により、シーンが展開してゆく。シアターXの空間全体をひとつの「箱」に見立て、セリや照明など、この劇場特有の機能を活かしたトータルなデザインは勅使川原ならではのものだ。この箱のなかで観客は、ニジンスキーならぬ勅使川原他のダンサーの「薔薇の精」たちにより、百年の夢を見させられていたのである。勅使川原はますます未踏の地の奥深く、分け入りつつある。
月刊シアターX(カイ)批評通信 2012年5月   立木燁子氏
身体の自律性を尊重しながら、この作品では、勅使川原(構成・演出・照明)は音楽や照明と融合して生み出される情緒性や劇的な意味を観客の感性に問いかける。。。舞踊とは、劇的とはを問い、舞台という小宇宙を生の現実へとつなげている。
Dance Cube チャコットwebマガジン   浦野芳子氏
『オルガンー呼吸する物理学—』このタイトルの意味するところは、観客ひとりひとりに委ねられている。舞踊家としての人生をすべてそこに凝縮させたうえで、新たな表現に挑もうと観客の前に立ち現れる彼らの身体は、ひとつの装置である。彼らの身体に接した人々の想像力に働きかけるための、装置なのである。
身体が発する“無言の物語”を想像の中で翻訳しながら、そんなことを思った。