Works / 活動紹介

ない男

演出・美術・照明・衣装:勅使川原三郎
原作:ロベルト・ムージル「特性のない男 (Der Mann ohne Eigenschaften)」
テキスト:宇野邦一
出演:勅使川原三郎、佐東利穂子、川村美恵、ジイフ、井手悠哉、林誠太郎、ナナ&ナイル
照明技術:清水裕樹 (ハロ)
音響技術:三森啓弘 (サウンドマン)
舞台監督:浅香亨/黒澤一臣 (OSK)
主催:シアターX/KARAS
初演:2008年12月11日
ムージル著の「特性のない男」は、言葉に表しきれない事を執拗に追い求める。
不可能性あふれる深い思考は、我々を大いなる湾曲した冒険に駆り立てる。
その身体実験では、言葉に置かされながら言葉を破壊する無謀な企みと、
幻覚者らしからぬ身体や喪失者らしからぬ風体が交錯する。
身体によって自らを破壊するかもしれない生との格闘である。
勅使川原三郎
勅使川原三郎が作り出す舞台に、もう何度も、知覚の劇場、思考の劇場を発見している。
そこでダンスは、時空を繊細に引き裂き、生の条件に新たな注意をうながすのだ。
横浜の倉庫に無数のガラスの破片をしきつめ突きさした部屋のダンスには驚愕した。
凶暴なガラスがやわらかく呼吸する。部屋は星雲のような空間になる。
激しいダンスとともにガラスの軋る音、散乱する光が、心身をばらばらにする。
次にはたおやかにに優しく揺れる身振りが、驚いた感覚をほどいて漂流させる。
ダンスは、生の時空を探索する装置になったのである。生身のからだひとつが
先端技術のなしえないテクノロジーになっている。そして彼の実験はとどまることがない。
ムージルのまったく実験的な終わりなき散文作品「特性のない男」は、
ただ奇妙な実験を深めることによって座礁し、数々の美しい断片を残した。
これらの断片を、あのガラスの破片のように用いて、未知の演劇が生成される。
宇野邦一
ギャラリー
レビュー(抜粋)
ダンスマガジン 2009年3月号  稲田奈緒美氏
身体が発する声と言葉に、身体そのものが、さらに空間、照明、音楽が挑み、包み込み、侵食し、不協和音を奏でる。身体と言葉の関係が、机上の抽象論によるのではなく、具体的で肉感的な生々しさをもって実験された、新たなパフォーミングアートである。
週間オンステージ新聞 2009年1月23日  門行人氏
この実験は計り知れない射程を持つが、見学者に与える刺激も並大抵ではない。